痛みのメカニズム


膝OAは内反変形を生じているため、内側の関節包は緩んだ状態となっています。では、内側関節裂隙の関節包に痛みを生じるようになるのは、なぜでしょうか? 上の表で示したように、内側関節裂隙の関節包は、膝OAのグレードが高くなればなるほど痛みが生じやすくなります。筆者はその理由として、伸長負荷、圧縮負荷および摩擦負荷が加わることにより内側の関節包に痛みが生じると考えています。このことについて考えてみましょう。

膝関節における脛骨外側変位


内反変形の進行に伴い膝関節には非常に強い外旋が生じるようになります。この外旋によって関節包は捻られるわけですから、関節包には伸長負荷が生じることになります。この時、関節包には、実はもう1つ重要な変化が生じます。それは、膝関節における脛骨外側変位です。

膝OA患者で内側裂隙の関節包に痛みが生じるメカニズム

膝関節内反位で荷重することにより内側半月板は内方へ押し出されることはよく知られています(上図a)。加えて、脛骨外側変位が生じると、上の図bに示したように大腿骨内側上顆が半月板を内方へ牽引するため、内側半月板は亜脱臼状態(内方変位)となります。進行した膝OAの内側関節面をエコー画像で観察すると、内側半月板が顕著に内方変位していることが見て取れます(上図c)。この内方変位により内側関節裂隙の関節包は内側半月板の亜脱臼による圧縮負荷も受けることになるため、この部位に疼痛を生じるようになるわけです。

また、上の図cのエコー画像を注意深く観察すると、亜脱臼を呈した半月板の周囲を膝蓋下脂肪体が覆っているのが分かります。これは、半月板と関節包との間に線維化した膝蓋下脂肪体が入り込んでいることを意味しています。

膝OAの膝蓋下脂肪体


 このことを、もう少し詳細に説明しましょう。健常者の場合、膝蓋下脂肪体は膝関節内側面の上の図aで示した範囲に位置していますが、濃い黄色で囲んだ範囲を除くと厚みはそれほどありません。一方、膝OAの場合は、上の図bのように肥厚した膝蓋下脂肪体が大腿骨と脛骨の内側上顆の部分も含めた広範囲に流れ込んでいます。ただし、内側側副靱帯と関節包とは結合しているため、後方に入り込むことはそれほど多くありません。

そのため、内側関節裂隙の関節包には半月板の亜脱臼による圧縮負荷が加わるだけでなく、膝蓋下脂肪体との間に生じる摩擦負荷も加わると考えられます。変形が進行した膝OAの内側関節裂隙の関節包には、伸長負荷と圧縮負荷に加えて摩擦負荷も生じることになり、これらの負荷により痛みを生じると考えられます。

 このようなことが分かると、内側関節裂隙の関節包の治療概念が見えてきませんか。つまり、膝関節の外旋の改善に加え、膝関節における脛骨外側変位の改善、内側の関節包の伸長性や滑走性の改善、内方に入り込んだ膝蓋下脂肪体の柔軟性や滑走性の改善などが、治療概念として見えてくるはずです。

参考文献

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