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ぶん回し歩行とは

脳血管障害片麻痺患者(以下、片麻痺患者)の特徴的な歩行の1つにぶん回し歩行があります。ぶん回し歩行では、遊脚時に麻痺側の股関節を外転して、足で床に円を描くように下肢を振り出します。しかし、ぶん回し歩行を呈している片麻痺患者の歩行を観察すると、振り出される下肢の運動軌跡は円弧状になるものの、全員が必ずしも一律の歩行様式をとっていないことに気づきます。

ぶん回し歩行は、体幹に生じる運動の違いによって、つまり体幹や骨盤に起始する筋の作用によって、3つの歩行パターンに分けられます。

1腸肋筋の作用によるぶん回し歩行


腸肋筋は、両側が作用すると体幹は伸展、片側が作用すると体幹は同側へ側屈します。片麻痺患者では、遊脚時に麻痺側の腸肋筋を使って骨盤を引き上げ、ぶん回し歩行を呈することがあります。この場合、腸肋筋の作用で体幹は同側に側屈し、胸郭の下制と骨盤の挙上が生じます。

上図では右腸肋筋が作用して、体幹の側屈や胸郭の下制、骨盤の挙上を行いながら下肢を振り出しています。

2腰方形筋の作用によるぶん回し歩行


腰方形筋は、両側の作用により第12肋骨が引き下がり、片側の作用では腰椎が同側へ側屈します。片麻痺患者では、遊脚時に麻痺側の腰方形筋を使って骨盤を引き上げ、ぶん回し歩行を呈することがあります。この場合、腰方形筋は骨盤から腰椎と第12肋骨にしか付着していないため、骨盤の挙上と腰椎の側屈に作用します。そのため、腸肋筋とは異なり胸郭を下制する作用はそれほど大きくありません。

上図では、右腰方形筋が作用して腰椎が側屈、骨盤は挙上して下肢を振り出しています。腸肋筋の作用との違いは、胸郭が下制しないことです。

3広背筋下部線維の作用によるぶん回し歩行


広背筋下部線維は、肩関節の伸展と内旋、体幹の側屈に作用します。片麻痺患者では、遊脚時に麻痺側の広背筋下部線維を使って骨盤を引き上げ、ぶん回し歩行を呈することがあります。この場合、広背筋下部線維に肩関節の伸展と内旋の作用があるため、体幹の側屈と骨盤の挙上に伴い上肢が後方に引かれます。

上図では、 右広背筋下部線維が作用して肩関節は伸展と内旋して上肢が後方に引かれ、体幹は側屈し、胸郭の下制と骨盤の挙上を行いながら下肢を振り出しています。