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想像してください。

もしあなたが、脳血管障害によってぶん回し歩行を呈する患者さんのリハビリを担当した時に、「先生、もっとスムーズに歩きたいのですが、どうすれば良いですか?」と聞かれたら、どう答えますか?

片麻痺患者の特徴的な歩行の1つである「ぶん回し歩行」は、学生でも知っているポピュラーな動きです。それほど認知されている動きなのに、改善を図るための具体的方法を私たちは教わってこなかったのが現状です。

そして、ぶん回し歩行をする方の多くが、「もう少しきれいに歩けるようになりたい」「歩く負担を減らしたい」と願っているのも事実です。

だからこそ私たちは、ああでもない、こうでもないと、ぶん回し歩行をする方に対して様々な運動療法を展開しています。

あなたは日々の臨床で、「この方にとって今一番必要な運動療法が何か分かるとしたら、どんなに便利なことか…」と感じたことありませんか?

さっそく、そのヒントとして今回は『ぶん回し歩行』について深掘りして解説しますので、しっかり読み進めてください。

患者のニーズに応える為のポイントを知ろう!

ぶん回し歩行の動作分析では下肢の振り出しに目が行き、一般的には「遊脚側の足関節底屈と内反尖足、そして膝関節の屈曲制限」に対して運動療法が行われていると思います。

しかし、別の視点で運動療法を展開することが重要であると書籍『脳卒中運動学』では述べています。その理由について、健常者の正常歩行と片麻痺患者のぶん回し歩行を運動学的に解釈し説明しています。その結果、「遊脚相以前の立脚後期に目を向けることが重要」であると結論づけてます。

実は運動器疾患においても同様のことが言えます。つまり、中枢性疾患でも運動器疾患でも「立脚後期」に目を向けることは効果的な運動療法を展開する上で重要なのです。

健常者における歩行時立脚終期の注目ポイント

注目ポイント①
踵離地直前

正常歩行ではこの時、股関節は最大15度伸展し、股関節屈曲に作用する腸腰筋が遠心性収縮をして股関節を制動しています。結論から言うと、この腸腰筋の遠心性収縮を利用することで、健常者の歩行は最小のエネルギーで遊脚時の下肢を振り出しています。つまり、股関節伸展とそれに作用する腸腰筋の収縮を促すことが運動療法において重要であることが理解できます。

注目ポイント②
踵離地後

正常歩行ではこの時、腰椎の伸展と骨盤が前傾し見かけ上、股関節がさらに伸展しているように見えます。これは多裂筋や最長筋が作用することで起こるとされています。つまり、腰椎の伸展と骨盤の前傾を引き出す多裂筋や最長筋の収縮を促すことが運動療法において重要であることが理解できます。

健常者における歩行時立脚終期の注目ポイント

ぶん回し歩行患者の立脚後期の姿勢を観察してみると、股関節が屈曲位であったり、骨盤が後傾位であったりしています。つまり、腸腰筋や多裂筋の筋緊張低下により、立脚後期の股関節伸展、腰椎伸展と骨盤前傾に伴う股関節伸展の複合運動が不十分となる可能性があるわけです。

Pattern①
股関節が屈曲位のまま立脚後期をむかえている

写真の様な場合、腸腰筋の筋緊張低下を予測します。腸腰筋の筋緊張低下により、股関節伸展の制動が困難となり、代償として股関節屈曲位や体幹の前傾を呈するのです。

Pattern②
骨盤が後傾位のまま立脚後期をむかえている

写真の様な場合、多裂筋の筋緊張低下を予測します。多裂筋の筋緊張低下により、腰椎伸展や骨盤前傾が起きず、代償として骨盤の後傾を呈するのです。

ぶん回し歩行患者の立脚後期の姿勢を観察してみると、股関節が屈曲位であったり、骨盤が後傾位であったりしています。 腸腰筋や多裂筋の筋緊張低下により、立脚後期の股関節伸展、腰椎伸展と骨盤前傾に伴う股関節伸展の複合運動が不十分となり、その結果として下肢のぶん回し歩行が起こると解釈できます。

腰椎伸展と骨盤前傾の運動が起こるからこそ、その後の爪先離地に必要な腰椎屈曲と骨盤後傾の運動の切り替わりが起こり、スムースな振り子運動が可能になるのです。

冒頭で「先生、もっとスムーズに歩きたいのですが、どうすれば良いですか?」という質問の答えが、少し見えてきたと思いませんか?

ここまで読み進めて頂いたあなたは、「立脚後期に着目した運動療法」の重要性が十分理解できたと思います。代償運動として表出された遊脚期に捉われるのではなく、代償運動になる原因の立脚後期に着目した運動療法が重要なのです。

今回は特別に、立脚後期に着目した運動療法の1例を、監修者の鈴木俊明先生自ら解説してくださいました。見れば見るほどたくさんの気づきが得られますので、最低でも5回は見てください(ちなみに私はこの動画を鈴木先生から頂いたとき、その場で10回は見ました。)。そのくらい勉強になる内容ですので、ぜひご覧になってください。

実技動画『立脚後期を改善するための運動療法』

いかがでしたでしょうか?今回は立脚後期に注目したぶん回し歩行の評価と運動療法のポイントについて解説しました。
こうしたぶん回し歩行について更に学びたい方、脳卒中リハビリで対応することの多い病的共同運動パターン、連合反応、肩手症候群、トレンデレンブルグ現象などの運動療法について学びたい方は書籍『脳卒中運動学』に詳しく書かれていますので、ぜひ読んでみてください。

参考図書

脳卒中運動学

監修:鈴木 俊明

© UGOITA ALL RIGHTS RESERVED.produced by 運動と医学の出版社

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